最上義光歴史館/館長裏日誌 令和5年11月25日付け

最上義光歴史館
館長裏日誌 令和5年11月25日付け
■「津軽海峡」と「天城」の思い出
 かつて青函連絡船が運行されていた頃、それは夜間に青森駅を出て早朝に函館に着くのですが、大晦日の船内では紅白歌合戦が放映されます。以前、その様子を記録した映像が放送され、年の瀬に連絡船に乗り「津軽海峡冬景色」を観ている乗客の姿に、思わずこっちまで入り込んでしまい、それまでなんとも思わず聞いていたこの曲が、今ではあのイントロを聞くだけで泣けてくることがあります。中学の修学旅行でこの青函連絡船に乗った時は、ただただ眠くて、気づいたら函館で、その時は、あの「は〜るばる来たぜ、函館ぇ〜」という歌だけが、頭の中で響いていました。
 天城方面にも行きました。浄蓮の滝はやはり見ごたえがあります。大きいので写真に収めるのがなかなか難しい。ここの滝壺には「女郎蜘蛛伝説」というのがあり、美しい女の姿になった女郎蜘蛛を見かけた樵(きこり)は、そのことを口留めされるのですが、いわゆるそういう話です。浄蓮の滝には「天城越え」の歌碑が設けられています。ちなみに竜飛岬には「津軽海峡冬景色」の歌碑が設けられていて、こちらはボタンを押すと「ごらんあれが竜飛岬、北のはずれと」と2番の歌詞だけが流れるそうです。
 あと観光名所と言えば、天城山隧道(旧天城トンネル)でしょうか。心霊スポットとしても有名らしいのですが、今は「千と千尋」のトンネルとも言われているそうで、以前は「伊豆の踊子」のトンネルとして有名でした。ちなみに川端康成が「伊豆の踊子」を執筆したという「湯本館」は心地のいい温泉宿です。お湯がとてもいい。また、「千と千尋」の湯屋のモデルだという「積善館」には広いお風呂場があり、ここの蒸し風呂がまた独特なのですが、天城の話と離れてしまうので、ご紹介は別の機会に。それにしても四万温泉のお湯はいいです。ほとんどが自然湧出で、飲泉もできるというのはすごいことです。
 話を戻すと、天城で一番記憶にあるのは、「孤独のグルメ」で紹介されていたわさび園かどやの「わさび丼」です。自分ですりおろした生ワサビをご飯にのせ、鰹節に醤油をかけるだけという、要するに「ねこまんま」の生わさびのせなのですが、これがやたら美味しい。添えられたワサビ茎の佃煮がまたいい。なお、すりおろさず残った生ワサビは持ち帰りできます。

■「カラス」と「雪」の話
 モネの絵というと、「睡蓮」とか「積みわら」とか「鉄道橋」とか「教会」とかを、時間とともに移ろう光の色で描き分けた連作を思い出されるかもしれませんが、「雪景色」を描いた作品も少なからずあります。光の変化を描き分けた連作はないのですが、雪化粧した「積みわら」の絵もあります。
 その中でもオルセー美術館蔵の「かささぎ」と題される作品が有名で、日本でも何度か展示されていますが、もう本当に、雪の光加減を見事にとらえています。しかしながらその「かささぎ」は、そう言われないと見落としそうな、雪景色の中にさりげなく小さな黒い筆跡で表されています。カササギは、上部が黒、腹部が白、尾が鮮やかな青色をしたカラスの仲間です。カササギは日本にもいるにはいるのですが、佐賀近辺にしかいないそうで、日本にはこれを含めて7種類のカラスがいるそうです。
 これを知って、なぜか「津軽には七つの雪が降るとかぁ〜」と口ずさみそうになりましたが、それはさておき、当館の手前にある人工池のほとりにはたまに、どうも他とは違う鳴き声のカラスが来ます。動物好きの当館学芸員に尋ねると、あれは近くの交差点の信号機の音を真似しているのだとか。興味のある方はぜひご来館を。雪が積もれば、あのモネの絵のような情景を、この一風変わった鳴き声とともに目にすることができるかもしれません。
 ちなみに山形は「津軽の七つの雪」のような詩情あふれる雪は少なく、降るのは「ボタ雪」とか「ドカ雪」とか、あとは「滑る雪」とか「滑らない雪」とかです。生活情報としては「重い雪」か「軽い雪」か、「積る雪」か「積もらない雪」か、「残る雪」か「残らない雪」かも重要です。まあ、こんな感じなので、津軽のような演歌は生まれないのかなぁ、山形は。

2020/11/25 15:55 (C) 最上義光歴史館