最上義光歴史館/館長日誌 令和8年2月14日付け
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最上義光歴史館
〒990-0046
山形県山形市大手町1-53
tel 023-625-7101
fax 023-625-7102
(
山形市文化振興事業団
)
館長日誌 令和8年2月14日付け
近年にない大雪となっています。青森では自衛隊の派遣要請もしているとのことで、「降り積もる雪、雪、雪、また雪よぉ〜、津軽には七つの雪が降るとかぁ〜」などと歌っている場合ではないことは重々承知しておりまして。それが「こな雪、つぶ雪、わた雪、ざらめ雪い〜」などではなく、単なるドカ雪であることも想像に難くなく、なんかこんなことを昨年も言っていたような。でも、雪が降ると、この歌が浮かんでくるんですよ。「こなぁ〜ゆきィ〜」とかは、あまり浮かんではきませんが。
山形県内も海沿いや山沿いは記録的な降雪ですが、山形城のあるこの山形市街だけは不思議に、あまり降らずに済んでいます。当館ボランティアさんも、ここに城を構えた最上家は偉いものだなぁ、などと囁き合っています。
さて、数多くの連歌を詠んだ最上義光ですが、やはり雪に関わる句もあります。
「入月のかけやとゝめし雪の庭」、文禄4年(1595年)12月16日に開催された歌会での発句でして、これはすなわち義光が主客の歌会であるということです。
この句を解釈すると、まず「入月」ですが、これは月が地平線や水平線の下に沈むことです。国立天文台では「月の中心が視地平線と一致する時刻を月の入り」と定義しています。「日の出」や「日の入り」は太陽の「上辺」が地平線にかかった瞬間ですが、月には満ち欠けがあるため、月の「中心」が地平線にかかった瞬間になるそうです。
次に「かけやとゝめし」ですが、これは連歌表記あるあるでして、濁点を補えば「影や留めし」となります。ここで「影」の意味ですが、これは「月影」つまり「月の光」です。古文における「かげ」というのは、この月あかりという「光」と月光に照らされる「姿」という2つの意味で主に用いられ、入試の重要古語とのこと。どうでしょう、この句を入試問題としては。
また、「月の影(月影、つきかげ)」は、主に秋の夜空に輝く月を表す秋の季語です。この句では「雪の庭」という言葉があるので、単純に冬の句かと思ってしまいますが、月影が地面に降った雪のように白く見える様子を「月の雪」と表すことから、この句では、実際には雪がない秋の庭を詠んでいるとも考えられます。また、第二句に「松風寒き」とあり、第三句に「秋くれて」とあるので、この句も同じ晩秋の句であることが推察されます。
まずは「入月」と「かげ」の意味がわかれば、雪の有無は別として、内容的に理解できる歌です。ちなみに義光の辞世の句とされているものでも月と雪を詠み込んでいます。「有といひ無しと教へて久堅の月白妙の雪清きかな」という句ですが、こちらはなかなか難解な内容ではあります。
さて、この発句に続くのは次の句です。
松風寒き釣簾のゝ山 弥阿 (=出羽国、光明寺僧侶)
軒近き木葉あらハに秋くれて 昌叱(=里村 昌叱(さとむらしょうしつ))
日かりかすかに雰はるゝ空 玄仍 (=里村玄仍(さとむらげんじょう))
まず、第二句の「松風寒き釣簾のゝ山」について。
脇句といわれる第二句は、発句と同じ季節の季語を用いる、と「連歌式目」にあり、一般的には体言止めになります。季語としての「松風」はやはり秋。しかも「寒き」とあるため晩秋です。一方、「釣簾」は夏の季語で、「野山」はこの句の場合、晩秋の野山でしょう。晩秋に夏の名残を対比させる、つまりは異なる季節の季語をぶつけるという、季語を重んじる脇句ならです。
ちなみにこの脇句を詠む人は「亭主」と呼ばれ、通常その席の主催者(主人)が担当しますが、名前にある弥阿という人は山形の「光明寺」つまり最上氏の祖・斯波兼頼の菩提寺の僧侶です。もしかして山形で開催かとも思いましたが、その参加者をみると山形で催された会ではないようだとのことです。
続いて、第三句の「軒近き木葉あらハに秋くれて」について。
第三句は、その会での連歌の「行様(ゆきよう)」を決定付ける重要な句とされ、その多くが「て」止めで終わります。一見、何気ない句ではありますが、ルールどおり「て」で止めており、また、ちょっとした仕掛けもあるようです。
さて、ここで問題です。「木葉あらハ」というのはどのような状態をさすのでしょうか。そのままでは「葉っぱが丸見え」となりますが、「木葉あらハ(露わ)」とは、実は木々の葉がすっかり落ちて枝があらわになっている様子のことです。これも入試問題にと。また、「秋くれて」は、「晩秋」と「秋の夕暮れ」の二つの意味を持つ季語で、この句では、発句や脇句からすれば「晩秋」ととるのが自然ですが、もしかしたらダブルミーニングになっているかもしれません。
そして、第四句の「日かりかすかに雰はるゝ空」について。
第四句は、「て」で終わることが多い第三句に続く自然な描写や動作で文脈を繋ぐこととされ、同じ季節や用語が連続しないようにともされています。
この句は一見、難解な感じですが、「日かり」は「光」です。しかし「雰」とは「雰囲気」という語句以外にはあまり見かけず、読み方も「フン」だけですが、「霧(きり)」のことです。つまりは「光幽(かす)かに霧晴れる空」という情景描写そのままでして、あえて軽く展開する(平気、平句)、この何気なさが第四句には大切です。
以上、発句から第四句までセオリーどおりでもあり、なんとなく読み解けるのですが、五句目以降となると、句の自由度が一気に増すため解釈が難しくなります。第五句は「すさましき雪に志かれや残すらん」というものですが、やはり難問でして、「すさましき雪に志かれや」とは、豪雪に埋まり動けない様のことですが、次の「残すらん」が何にかかっているのかわからず、さらに六句目がまた、いきなり飛躍した展開となっていて、しかも本歌取りのような、掛詞のようなものがありまして。ということで、今回はこれくらいで勘弁願います。
何分にも、この連歌が巻かれた年(文禄4年)は、駒姫が斬首された年(8月2日)であり、背景にはそれも読み込まれている可能性があります。連歌の底は知れず、やはり私のような者が語るには百年早いかと。
(→裏館長日誌に続く)
2026/02/14 17:15 (C)
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